母が生まれたのは戦争が終わった翌年のことだ。
兄妹は多く、実父は母が小学生の頃に亡くなった。
稲刈りや家の仕事で学校を休むのは当たり前だったし、近所の家の子守を手伝って少々の駄賃をもらい、中学を出て直ぐに就職した。
兄妹のうち高校に行けたのは末の妹一人だけ。
「昔はね洋服を買うのは月賦だったのよ。会社や家に売りに来て、それを何ヶ月もかけてお金を払うの」
そんな話をよく聞いた。
その後の話は割愛するが、困窮と言うほどではないがそれほど余裕があるというわけではなかったと思う。
仕事をして稼いだお金は貯金や保険や子供たちのために消えていった。
年に一度、家族みんなでプロ野球を見に行った。
あの頃、母にとっての娯楽とは何だったのだろう。
私は何も分かってない、ただの馬鹿な子供だった。